愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

プロローグ

 朝8時15分。「行ってらっしゃい」 いつもの時間にダイニングでいつもの台詞を行って見送る。 そして、その台詞に何の返事もないのもいつも通り。 毎朝のこの儀式に何か返事があったことはない。 それどころか僕の顔すら見ていない。 だって僕たちの…

永遠の別れ 01

「ごめんな、元旦は会えなくて」「婚約者がくるんだろ?」「そう。毎年家族で新年の挨拶に来るんだ」 12月30日の夜。俺は恋人の和真と電話で話していた。話題はお正月のこと。恋人がいるなら大晦日の夜か元旦の昼間には一緒に初詣に行きたいところだけど…

永遠の別れ 02

「千景くん。この子、本当に愛想ないし可愛げもなくてごめんなさいね」「いいえ、そんなこと」 千景と話していると母さんが横から口を挟んできた。 愛想がないんじゃなくて人によって使い分けているだけだし、可愛げなんて三十路の男に必要ないだろうと思う…

新しい生活 01

「ハワイでもそうだったけど、お互いの生活を干渉するのはやめよう。お前はお前でやりたいこと、行きたいところがあるだろうし、俺もある。そして食事だが、夜は帰宅もまちまちだし会食もあるから家で食べるとは限らないから、お前は自分で勝手に食べろ。朝食…

新しい生活 02

 午前11時。 僕と陸さんは陸さんの実家へと行く。もう何度も来ているけれどほんとに大きい家だと思う。高級住宅街にありながら、その他の家よりも明らかに大きい。日本を代表する宮村製菓社長の家だと思うとその大きさも頷ける。 今日は陸さんの運転で来…

小さな幸せ 01

 お土産を持って陸さんの実家とうちへと行ったけれど、当たり前だけど番になって孫を、と言われた。 でも、番になるというのがハードルがかなり高い。だって、お互いに干渉しないって言っているし、部屋も別々なのだから僕がヒートになったところで陸さんは…

小さな幸せ 02

 週末の夕食を陸さんと食べるようになって3週間ほど経ち、会話は相変わらずないけれど、陸さんが仕事に行くときはリビングから見送り、帰ってきたときは電気をつけて、まだまだ外は暑いからエアコンでリビングで涼しくしておく。 陸さんときちんと顔を見合…

歩み寄り 01

 5日後の金曜日の朝。 ダイニングで朝食を食べていると千景が部屋からでてきた。そして顔を赤くして俺に謝ってくる。きっと俺にヒートだったとわかってしまったのが恥ずかしいのだろう。「陸さん、お昼を作るって言った翌日に作れなくてごめんなさい。あの…

歩み寄り 02

 俺が週末のお昼も作って貰うようになって、いちいち食べに行く手間が減った。外に行くのはいいけれど、毎週末外で食べるとなると数件のお店をローテーションで食べることになり結構飽きていたのも事実で、だから千景が作ってくれるのは正直助かる。 それに…

もやもや 01

「陸さん。今日、中学・高校の頃のクラス会があるので夜、少し遅くなります」 朝、食事をしている陸さんに声をかける。少し前にクラス会の誘いが来ていて、金曜日の今日がそのクラス会の日だ。「気にするな。俺も今日は遅い。ただ、あまり遅くなるようならタ…