Always in Love

デートしたいのはあなたなのに

 抜けるような青空の下、僕は婚約者である南と公園までの道を二人揃って歩いていた。桜が8部咲きで、陽がさすと暖かくてもっと軽装でも良かったかな、と思うほどだ。「ねぇ。ボート乗りたいな」 いたずらっ子のような笑顔で、彼女が顔を覗き込んでくる。「…

失恋さえできない 01

 朝いつものように起きて、コーヒーだけを飲んで颯矢さんの迎えの車に乗り込む。でも、空腹でコーヒーを飲むと胃が痛くなるような気がするので、昨日コンビニで買っておいたサンドイッチを車の中で食べる。「社長から伝言で、撮影が終わったら事務所に寄るよ…

失恋さえできない 02

 居心地がいいな、と思う。店自体はそんなに静かというわけではなく、かと言って騒がしいわけではない。お客さんも、この時間だからか変に酔っ払っている人もいない。みんながそれぞれにお酒を楽しんでいる風だ。 セクシャリティーも色んな人がいるっぽくて…

バンコクにて

「わぁ。水の上で気持ちいいね」「水がかかることあるから気をつけて」「うん!」 バンコクへ来て半年。南がバンコクへ遊びに来た。半年ぶりの再会だ。 今日はバンコク市内の観光ということで、ワット・アルン(暁の寺)とワット・ポー(涅槃寺)を回ること…

スクープ 01

 バンコクから帰ってきた翌日は夕方からの撮影だった。なので、撮影に行く前に母さんのお見舞いに行って、その後に事務所に行く。社長と事務の浅川さんにお土産を渡すためだ。 病室のドアをそっと開けると、おばあさんも母さんも寝ていた。母さんのベッド脇…

スクープ 02

「結構広いのね」 南をバンコクでの部屋に連れてくる。会社からほど近いところに会社側が用意してくれた部屋だ。確かに1人で住むには充分な広さだ。「誰も連れてきてない?」「来てないよ」「会社の人も?」「うん」「女の人は?」「来てない。というか連れ…

転機

「私、間違えたかな?」「なにを?」 食事をしていた手を止め南が言う。なにを間違えたと言うのかわからなかった。「結婚するのに、海外に住むのが怖くて航について来なかったけど、今になって、なんでついてこなかったんだろうって思うの」「後悔してるの?…

記憶 01

「俺と社長に話があるってなんだ?」 ある撮影の終了後。俺は社長と颯矢さんに話があると言って時間を取って貰っていた。「事務所に行ったら話すから」 颯矢さんは話の内容が気になるようで、事務所への移動の車の中で話を振ってきた。 話の内容は、もちろ…

記憶 02

 血を流して倒れている颯矢さんを見て、気は動転しているが冷静にどうしたらいいのか考える。そうだ。救急車だ。後、社長に電話した方がいいかな? まずは救急車だ。119番通報して、怪我人がいることを伝え救急車の到着を待つ。それから、社長室に電話を…

届かない想い 01

 颯矢さんが俺のことだけ覚えていない、という事実は心を抉られるようで辛い。正直、仕事なんてする気になれない。でも、記憶の戻った颯矢さんがそんな俺をなんて思うかわからないし、なにより、今撮影中のドラマを俺の代表作にしたいと思ってくれているのな…

届かない想い 02

 その日の撮影は散々だった。集中力に欠いていて、NGを連発してしまった。亜美さんをはじめ、その他の共演者の人はもちろん監督さんやスタッフさんに迷惑をかけてしまった。「城崎くん疲れてる? ちょっと休憩入れようか」 最近の俺のタイトなスケジュー…

記憶と引退 01

 社長と話をしてからずっと俺は休暇のことを考えていた。長期休暇の結果、芸能界をやめていく人は実は結構いる。としたら、その手を使ってもいいんじゃないか、と思ったからだ。 それでも、その手はなんだか卑怯な気がしなくもない。だって、俺の方はフェー…