EHEU ANELA

不出来なオメガのフォーチュン

第2章 01

チンピラに絡まれているところを神宮寺に助けられてから二週間後。直生はネオン街で途方に暮れていた。

ここはドラマや小説の世界か! と言いたくなるようなことが自分の身に起きたのだ。

それは、家に帰ったらアパートが全焼し、住む家がなくなっていました、ということだ。

現実にそんなことがあるのか? と訊かれたら99%の人は"ない"と答えるだろう。だが、実際に起こったのだ。

朝、いつも通りに起きて、アパートを出て出社し、いつものように仕事をし、少し残業していつものようにネオン街を通って帰路についた。ここまでは本当にいつも通りだったのだ。だけど、ここでいつもと違うことが起こった。

それは、そこにあるはずのアパートは、真っ黒に燃え盛った後だったのである。

近所の大家さんのところへ行き話を訊くと、お昼ごろ火の気がたち、瞬く間に全焼してしまった、という。消防の言う所では煙草の消し忘れのようだ、という。

そんなわけで直生は仕事へ行ったときに持っていたもの以外全てを失った。着るものも、仕事を持ち帰ったときに使用していたパソコンも全てなくなったのだ。

大家の話では見舞金が出るらしい。そして失くなってしまったアパートに関しては、新しく建て直すという。その新しいアパートには、住んでいた人を優先的に住めるようにしてくれるらしいし、その際の敷金礼金は必要ないという。それはありがたい。

しかし、かと言って一日や二日で完成する訳ではない。ということは当面の間住むところが必要になるし、見舞金が出るとは言え、焼け失った家財道具一式を揃えるとなると足りないだろう。それが頭の痛いところだ。

直生としては、職場へのアクセスや利便性を考えると、新しく住む所を探すとなるとこの付近で探す。なので新しくアパートが出来るのを待とうと思うが、その間数ヶ月だろうが仮住まいが必要となる。

実家が近ければ、その間だけ実家に帰るという手もあるが、直生の実家は職場へ片道二時間半ほどかかるので、通勤だけで疲れてしまうので現実的ではない。となるとビジネスホテルかウィークリーマンションだろうか。

友人の家、という手もあるかもしれないが、数日ならまだしも数ヶ月も厄介になるわけにはいかない。とは言え数ヶ月もホテルに泊まるなんてことは無理だので、ホテルに泊まるか友人のところに泊まりつつ数ヶ月の仮住まいを探すことになるだろう。まさか新しいアパートができるまでホテル住まいというわけにはいかない。そんなことが可能ならサラリーマンなんてやってない。

通勤範囲内の友人、となると和明だが、あいにく和明は昨日から出張で中国へ行っていて一週間は帰ってこない。後は大学時代の友人が何人かいるけれど、通勤には遠いし、今は和明ほど仲が良いとは言えない。

ということは友人宅は無理なのでホテルに泊まりながら仮住まいを探すしかない。この辺にビジネスホテルはあっただろうか。ラブホテルばかりが目立っていて思いだせない。

あぁ、取り急ぎ必要な着替えを買わなくてはいけないな、と思ったところで、それよりも先に抑制剤を貰いに病院に行かなくてはいけないことを思い当たる。手元に緊急用として二錠あるのは良かったが、まずは仕事を休んで病院へ行かなくてはいけない。いや、和明がいない状態で自分まで休めるのだろうか、と思う。けれど、緊急事態なのだ。一日でいいから休まないとまずい。

そんなことを考えると胃が痛くなってくる。いつでも連絡取れるようにすれば休めるだろうか。病院の中にいるときは携帯に出れないが、それくらいは大丈夫だろうか。

とりあえず今日から数日はビジネスホテルだろうか。キャッシュカードやクレジットカードはあるので当面のお金はあるとは言え、仮住まい先が見つかるまでビジネスホテルは厳しい。かと言って満喫では荷物を置けない。どうしたらいいんだろうか。

いつもならひとつひとつ解決策を考えられるが、ショックからか、思考があちこちへと飛びまとまらない。まずは何をすればいいんだろうか。

そんな時、ふわりと落ち着く香りがしてきた。この匂いが誰からなんて考えなくてもわかる。神宮寺だ。


「おい、こんなところで何をしている」

間違いない。神宮寺の声だ。顔を見なくても香りでわかる。間違いない。神宮寺の声だ。顔を見なくても香りでわかる。

それでも、香りがしてから声がかかるまで少し間があったから、それなりに離れていたのだろう。それでも香りには気づくのだ。

しかし、声をかけられるまで少し時間があったように思うから、きっとそれなりの距離があったのだろう。

声の方を向くと、黒い、いかにもな車を背に神宮寺がこちらを見ている。神宮寺に会うのはこれで三度目だ。


「……」

こんなところで……。

こんなところ、と言われて、直生は自分がネオン街のビルの脇に突っ立っていることを思い出した。

あぁ、そうか。こんなところで突っ立ってないで、少し行った先にあるカフェにでも行けばいいのか、と神宮寺から声をかけられてやっと少し頭が回った。


「おい。こんなところで何をしている、と訊いている」

声に若干の苛立ちが感じられる。神宮寺にしてみたら二週間前に、ここでチンピラに絡まれているところを助けたのに、またこんなところで突っ立って何をしているんだ、と思うのだろう。そして、問を繰り返したことも苛立ちの一つになっているのかもしれない。


「いえ、カフェに行こうかと」

カフェに行く人間がこんなところに突っ立っているのはおかしいかもしれないが仕方がない。だって、今、気がついたのだから。

そして当たり前だが、神宮寺は直生の答えに納得がいっていないようで眉間に皺を寄せている。


「カフェに行くのなら、何故こんなところで突っ立っている」

神宮寺は、今直生が思ったばかりのことを言った。苛立ちは大きくなっているようだ。その様子にいつもなら怖いと思うのかもしれないが、今の直生は平気だ。それどころではないから。


「……んです」
「なんと言った?」

神宮寺の問いかけに答えるも、そんなにしっかりと答えられず、つい小さな声になってしまった。


「泊まるところを探しているんです」

その答えに、神宮寺の眉間の皺はさらに深くなる。

人間、眉間の皺ってそんなに深くなるんだな、と神宮寺を見ながら思う。完全な現実逃避だ。


「泊まるところなんて必要ないだろう。なんで自宅へ帰らない?」

確かに普通ならその反応をするのかもしれないし、それが正解なのかもしれない。けれど、その自宅がない場合は?

火事で燃えてしまっていたら? 帰りたくたって帰るところがないんですよ、と心の中で思う。もう放っておいて欲しい。さすがに怖くてそうは言えないが。


「なにかあったのか?」

ありましたよ。ありました。火事という一大事が。そう考えて直生はため息をつく。


「火事が……」
「火事?」
「火事があったんです。だから……」

だから、ビジネスホテルがどこにあったかなんて、いつもならすぐに思いつきそうなことも、疲れた心と体では簡単に思い出せなくて突っ立っていただけだ。


「火事があって行くところがない、ということか」
「はい」

直生は小さく返事を返す。これで放っておいてくれるだろうか。今はもう疲れ切っていて誰かに説明したり話したりするのがキツい。しかし、神宮寺は何か考えているようだ。


「なら、うちへ来い」
「は?!」

神宮寺の思いもかけない言葉に、直生は意味がよくわからなかった。いや、なんて言っているのかは聞き取れている。しかし意味がわからない。


「行くところがないというのなら、うちに来ればいい、と言ったんだ。こんなところに突っ立ってたら、また絡まれるぞ」

――うちに来ればいい


直生は頭の中で何度も反復する。が、やはり意味がよくわからずに答えに悩む。



「え?」
「だから、うちへ来ればいいと言ったんだ」

何度も同じことを言わせているからか、神宮寺の眉間の皺はこれ以上深くはならない、というところまで深くなっている。


「チッ」

そして、聞こえるか聞こえないかの小さな声で舌打ちしたのが聞こえた。怒らせてしまったかな、と頭の回っていない直生もさすがに焦った。怒らせちゃったらどうなるんだろう。この間のチンピラより怖いんじゃないだろうか、とビクビクする。

しかし、いつもならば、おどおどしながらすぐに謝るところだが、やはり平常時とは違うのか、今はそれどころではなく、どうにでもなれ、という自暴自棄なところもあった。


「その様子では漫画喫茶かビジネスホテルを考えていたんだろう?」
「ウィークリーマンションも」
「あぁ。どこかに一時的に身を置きウィークリーマンションを探すのか。それなら、きちんと部屋を探した方がいいんじゃないのか?」

神宮寺は直生の少ない言葉から、今直生が考えていることを瞬時に理解したらしい。頭がいいのだろう。いや、普通はわかるのか? 少なくとも今の直生にはわからない。わかっていたら突っ立っていたりはしない。ただ、全部を話さずとも理解してくれたことはありがたい。


「元のアパートがまた新しくアパートを建てるみたいなので、そこができたらまたそこへ入居したいので」
「そうか。それなら、それまで俺の家にくればいい」

神宮寺がそういう。

何を言われたのか一瞬よくわからず、少しの間考える。そして、しばらくして泊めてくれると言ってるんだと思い当たる。

ありがたい。とってもありがたいがよく考えて欲しい。神宮寺はαなようだ。そして直生はΩだ。ヒートが不順で外見もΩらしさの欠片もないが、間違いなくΩなのだ。

そんなΩがαの家にのこのことついていくわけがない。


「大丈夫だ。家はふたつあるから俺のことは気にしなくていいし、いつまでいてくれても構わない。それとも、頼れる恋人でもいるのか」
「いません、けど」

いたら突っ立ってない、と心の中で付け加える。

「それなら好きに使えばいい。俺はもう一方の家を使うから。新しい部屋が見つかるまででもいいし、いつまでいてくれても構わない。会社に行くにはこの近所の方がいいのか?」
「あ、はい」

直生がついそう答えると、神宮寺は運転席にいた男に声をかける。


「それならそちらを貸す。乗れ」

運転手とは別の男が黙って後部座席のドアを開け、直生を見る。神宮寺の方を見ると、神宮寺は既に後部座席に収まり直生の方を見ている。

乗っていいんだろうか。借りるともなんとも返事してないんだけれど。そう思いながらも、ここまで来て借りませんとも言えないよな、とノロノロと後部座席に座る。

車に乗るとサンダルウッドの香りがより一層強く香った。今まで乗っていたからだろうか。先程よりも香りが強くなったことでなんだか安心する。なんとかなるんじゃないか、となんの根拠もないけれど思ってしまう。本当に不思議とこの香りは鎮静効果がある。


「今夜必要なものは買ったのか?」
「いえ、まだなにも」
「そうか。マンションの隣がコンビニだからそこで買うといい。コンビニで買えないもので他に必要なものはないか? 薬とか。薬と言えば抑制剤はあるのか」

神宮寺は矢継ぎ早に質問してくる。


「今夜はコンビニだけで大丈夫です。抑制剤は二錠あるので、明日病院に行けば大丈夫です」
「そうか」

その後、神宮寺は黙った。直生があまり話さないからか神宮寺も黙る。少し気まずさを感じないでもないが、顔見知り程度の相手と普通に話せるような性格でもない。相手から訊かれたら答えるのが精一杯だ。

明日はスーツなんかも買いたいから一日。だめでも半日は休みを貰わないと、などと車窓を眺めながら、つらつらと考える。先程まで頭がきちんと回っていなかったというのに、神宮寺の香りに触れただけでホッとして思考もしっかりと回ってくる。

ウィークリーマンションって家賃は高いのだろうか。咄嗟にウィークリーマンションを考えたけれど、高いのか安いのかなんて全然わからない。それとも、本当に神宮寺に甘えてもいいのだろうか。いや、他人の好意にそこまで甘えるわけにはいかない。ウィークリーマンションが高いのなら、短期間でもいいからきちんと部屋を借りた方がいいのだろうか。もし、良いところがあるのなら元のアパートに戻らなくてもいいかもしれない。

そんなことを考えている間に車は止まった。それほど走った感じはしないから、ネオン街からはそれほど遠くはないのだろう。

車が止まると、運転手と助手席に座っていた男が真っ先に車を降り、神宮寺と直生の側のドアを恭しく開ける。神宮寺はいつもこうやって乗り降りをしているのだろう、とても自然だが直生はタクシー以外で人に開けてもらうことなどないから身を縮めるようにして、そそくさと車を降りる。

車から降り、目の前のマンションを見上げると首が痛くなった。一体、何階建てなんだろう。とても高い高層マンションだった。

運転していた男は車に戻ったが、助手席に座っていたもう一人の男は神宮寺の前を歩き、マンションへ入るために鍵を開け、数台あるうちのひとつのエレベーターボタンを押す。エレベーターは待ってましたと言わんばかりにすぐに開いた。


「エレベーターは専用エレベーターで他のエレベーターでは行けない。エレベーターを間違えるな」

神宮寺の言葉に言葉が出てこないが、恐らくセキュリティを考えてのことなのだろう。どう見ても一般のサラリーマンには見えない神宮寺には必要なセキュリティなのかもしれない。


「この辺に土地勘はあるか? あのネオン街からはさして距離はないが」

車窓を眺めていたが、途中までは見知った景色だったが途中からよくわからなかった。それは考え事をしていたからだけではない気がする。


「えっと。わかるような、わからないような。途中からよくわからなかったです」

ここからどう行けば見知った景色に出会えるのかがよくわからない。住んでいたアパートと同じ側へ来たけれど、途中からが違ったような気がする。


「それなら明日の朝迎えに来る。徒歩なら道も覚えるだろう」

道がわからない、と言えば迎えに来ると言われる。まさか、そう言ってくれるとは思わなかった。道がよくわからないからスマホのナビゲーションで歩こうと思っていたところだった。

それに、一人で呑気に散歩をするようにも見えない神宮寺の口から”徒歩”という言葉が出てくることも驚きだった。

そんなことを考えているうちにエレベーターは止まる。エレベーターを降りた廊下からは外を見ることができなかった。景色を楽しむことはできないが、これもセキュリティの一部なのだろうか? 専用エレベーターなんてものがあるマンションなんて初めて知ったのだからわかりようもないが。

エレベーターを降りて左へ行ってすぐ。前を歩いていた男が玄関ドアを開けると神宮寺が中へと入り、直生はその後に続いた。


「ここはオートロックだ。外出するときは鍵を忘れるな。入れなくなる。合鍵は念のため俺が持っておくがすぐに来れるとは限らないから気をつけてくれ」

そう言い部屋の案内をしてくれる。

玄関だけでもひろく、6畳くらいはあるのではないだろうか。玄関から入ってまっすぐが広いリビングダイニング。あまりにも広くて何畳あるのかさっぱりわからない。

リビングダイニングに来るまでの右手側にトイレと風呂らしき空間があり、左手側にもドアがあったからそこも部屋なのかもしれない。そしてリビングダイニングの奥の左右にもドアが見える。3LDKになるのだろうか。しかし、世の一般的な3LDKでじゃなく、かなり広いが。

神宮寺はリビングダイニング奥右側のドアを開ける。キングサイズと思われる大きなベッドが部屋の真ん中に置かれている。部屋の奥に大きな窓があるが、ぎりぎりベッドに陽がさすかどうかだろう。そのくらい部屋は広い。


「シーツはセットしてあるが使っていないから、とりあえず今日はこれで我慢してくれ。明日新品のを持ってくる。後、掃除だが数日に一回サービスが入るし、掃除ロボットも毎日動くから掃除はしなくていい。洗濯は希望すればやってくれるが、人に洗濯物を触られるのが気になるようであれば自分でしても構わない」

そう言って寝室を出てリビングダイニングの左側の部屋を除くと書斎になっていた。神宮寺いわく持ち帰りの仕事をしたりするそうだ。そして残り一部屋は客室になってるという。

部屋を一通り案内された後はランドリールームに案内される。ランドリールームなんて洒落た名前のつく空間なんか見たこともなかった。洗濯機は洗面所の片隅にあるものしか知らない。

でも、通されたランドリールームは乾燥機能付き洗濯機が置かれているだけでなく、アイロン台もあり、アイロンもそこでかけることができるようになっていた。洗濯に関する全てのことがこの一部屋で可能なのだ。

ランドリールームの次はキッチンだ。キッチンはリビングダイニングの少し手前側にあった。


「恐らく必要なものは全て揃っていると思うが、もし足りないものがあったら言ってくれ、すぐに揃える」

キッチンは直生が住んでいたアパートよりも広く、ゆったりしている。そこに、オーブン、電子レンジ、トースター、ケトル、炊飯器。鍋やフライパンは壁にかけられている。パッと見足りないものなどなさそうだ。大体、直生はさほど料理をする方ではない。簡単なものを作るくらいだ。


「このくらいだがわからないことはあるか?」
「多分大丈夫かと……」
「そうか。もしわからないことがあったら連絡をくれればいい。とりあえず明日九時に迎えに来るから、その時に訊いてくれてもいい」

そう言ってメッセージアプリのIDを交換した。


「これが鍵だ」

そう鍵を手渡されるとき、二人の指先が触れた。

その瞬間、ビリビリと電気が走ったような感じがし、体がじんわりと熱くなり熱を持ちはじめた。まるでヒートを起こす前みたいに。

直生が自分の体の反応に戸惑っていると、触れた相手である神宮寺も電気が走った感じがしたのか、じっと自分の手を見ている。そして、直生の様子の変化に気づいたようで、明日来ると言うと側近の男を連れて帰っていった。

二人が帰ると、糸が切れたように直生はその場にヘナヘナと座り込んだ。そして、一人になったことで少しずつ熱が落ち着いてくる。

一体何があったのだろう。いや、軽く指先が触れただけだ。それなのにビリビリと電気が体中を貫いたような感じがし、それと同時に体が熱を帯び、じんわりと熱くなってきたのだ。あのまま触れていたらヒートを起こしたのではないか。

そして、電気が走ったように感じたのはどうやら直生だけではないようだ。あの呆然と立ちすくんだ様子の神宮寺を見ると、彼もまた電気のようなものが走ったのだろう。

熱くなりつつあった体は、神宮寺が帰り一人になったことでヒートを起こす方へ向かわずに少しずつ落ち着きを取り戻していた。もし、神宮寺が直生の様子に気づかず、あのまま同じ空間にいたらどうなっていたのだろうか。熱を帯びた体と強く香る神宮寺のフェロモン。

神宮寺のフェロモンがヒートを促進させるかどうかはわからない。けれど、あのままでは間違いなくヒートを起こしていただろうし、直生がヒートを起こせば神宮寺はラットを起こす。その状態が危ないことくらいはわかる。

でも、指先が触れただけで電気が走ったようになるなんて、どうしてなのだろう。体は熱を持ち始めたし。どうも神宮寺とはよくわからないことが起きるらしい。お互いの香りが辺りを充満して感じたり。それはどうしてなのか。考えると一つの単語に突き当たるので、そこで思考を停止させた。そんなことあるはずがないのだから。

その夜はベッドに入ってからもそのことを考えてしまい、なかなか眠れなかった。