EHEU ANELA

遠回りのしあわせ〜You're my only

番外編3

伊勢エビの後は口直しとしてシャーベットが出てくる。さっぱりしていて気持ちいい。

そして口直しの後は旬野菜のサラダと続き、メインの宮崎牛が出てくる。


「牛肉だーー!!」

楽しみにしていた宮崎牛が出てきて思わず歓声をあげてしまう。立樹は大笑いだ。


「そんなに楽しんで貰えて嬉しいよ」
「だってさ、ステーキだよ? ステーキ。牛肉はたまに食べるけど、こういうところで食べる和牛ステーキってさ美味しいじゃん」
「悠はほんと好き嫌いなくなんでも美味しく食べるよな」
「えー嫌いなのあるよ。酢の物。お酢を使ったのは無理」
「でも、素材で嫌いなのってないんじゃない?」
「あぁ、そうかも」

そこで思い出したのは父親の言葉だった。うちは母が好き嫌いが多いので、父は俺にはなんでも食べられるように小さい頃になんでも食べさせたらしい。

もちろんそれで好き嫌いが少ないのかはわからないけれど、俺はたいした好き嫌いもなくなんでも美味しく食べる。そう、お酢を使った料理以外は。


「シンプルな味付けだから牛肉の美味しさが引き立つよね」
「だな」
 

俺はステーキはシンプルな味付けで食べるのが好きだ。と、そこで思い出した。


「そういえば結婚式のあとに皆で食べたのもステーキだったな。味付けは違うけど」
「そうだな。お祝いっていうとステーキは定番だな」
「お祝い以外でも結構食べに行くことある気がする」
「ちょっとしたときに食べに行くかもな。さすがにしょっちゅうではないけど」
「家でもたまに食べるしな」

でも牛肉の良さは色々だよなと思いながら食べる。

さすがに和牛は高い。だから普段食べる牛肉は海外産の牛肉が多い。でも、美味しいのは断然和牛だ。その中でも宮崎牛は美味しいとされている。

そんな宮崎牛をシンプルな味付けで食べられるのは贅沢だ。

美味しい宮崎牛を食べた後は、やっと食事でご飯、味噌汁、香の物が出てくる。ご飯は一つはガーリックライスだ。


「すいません。取り皿を頂けますか?」

ご飯を分けるために立樹が取り皿を頼んでくれる。そして、ガーリックライスを半分俺の方に、そして普通の白米の半分を立樹の前に置く。

ここまでがシンプルな味付けだったから白米だと少し寂しい気がしていたけど、お米も美味しくて意外とそのままでも美味しく食べれた。とはいえ、にんにくのパンチのあるガーリックライスも美味しいけれど。


「あ、この後のデザートのためにお腹あけておいて」

デザートが出るのはわかってるけど、デザートが仮にケーキだとしても1ピースくらいペロッと食べちゃうけどな、と思いながらも頷いた。

と、頷いたけれど美味しい白米とにんにくに刺激されたガーリックライスでご飯を残すことはなく、ぺろりと全部完食してしまった。


「立樹、ごめん。美味しくて全部食べちゃった」
「ガーリックライスにしたのが間違いだったかな」
「いや、白米も美味しかったよ。いいお米なんだと思う」
「デザート大丈夫か? 甘い物は俺苦手だからな」
「でもケーキ1ピースくらいは食べれるでしょ」
「甘さ控えめならな」
「いいお店では甘すぎるのなんて出ないよ」

そう言って俺は楽観視していた。

お皿が片付けられどんなデザートかなと楽しみにしているとまずコーヒーが置かれ、そのあとにホールケーキが出てきた。チョコレートケーキでプレートには『5th Anniversary』と書かれている。

つやつやのチョコレートでコーティングされていて見た目からして美味しそうだ。


「5周年記念だからな。花束も考えたけど旅行中だと大変かなと思ってケーキにした」
「だからお腹あけとけって言ったんだね」
「そう。一番小さいホールにしたけど普通のデザートのケーキよりは多いかと思って」
「もし今食べきれなかったら後で部屋に持ち帰れるかな?」
「大丈夫じゃないか」
「まぁ頑張る。立樹も食べてよ」
「頑張るよ」

多分、俺が今チョコレートにハマってるからチョコレートケーキにしてくれたんだろうなと思う。家でもチョコレートを食べたりしているから。

切り分けられたケーキを一口くちにすると、甘さ控えめな上品なチョコレートの味が口いっぱいに広がった。


「これ、甘さ控えめだから立樹でも食べれると思うよ」

俺がそう言うと立樹はケーキを口に入れた。すると目が見開いて、美味いと言った。


「美味しいよね」
「そうだな。でもチョコレートだから俺は頑張って2ピースいけるかどうかだぞ」
「えー、残り全部俺が食べるの? それこそ部屋に持ち帰らないと無理だよ。立樹も頑張って」

俺がそう言うと立樹はスタッフに部屋に持ち帰れるか尋ねると後で部屋に届けてくれると言うので、できるだけここで食べて食べきれない分は届けて貰うことにした。


「あ! ケーキ、写真撮るの忘れた。その前にスマホ持ってくるの忘れてた」
「気がつくの遅かったな」
「でも、こんなに記念日のプレゼントありがとう。ここに泊まるのも、貸切露天風呂も、この食事もほんとに最高だよ」
「喜んで貰えたのなら良かった」
「っていうかさ、俺だって男なのに立樹になんのプレゼントもしてない」
「悠は喜んで笑っていてくれればいいんだよ。それが俺への最高のプレゼントだから」
「……キザ」
「嫌い?」
「立樹だから許せる」

立樹は俺が喜んでいればいいって言うけど、ちょっと悔しいと思う。小さなことでもいいからなにかすれば良かった。と考えて、今までもなにもしてこなかったと後悔する。となると、ほんとに喜んで笑うしかない。いや、そうしようとしなくても今の時点で十分嬉しくて笑っていると思うけど。


「よし! 食べよう!」

立樹が頼んでくれたアニバーサリーケーキだ。美味しいし、立樹の分まで食べるぞと気合いを入れる。


「そんなに気負わなくても大丈夫だよ」

立樹はそう柔らかく微笑む。


「でも、せっかくのアニバーサリーケーキだよ? 味わって食べなきゃ」
「そう思ってくれただけで十分だよ。そんなことより食べよう」
「うん!」

ここまで5周年記念を演出してくれた立樹に感謝しながら俺はケーキを食べた。チョコレートだけどビターチョコレートだからほろ苦くて結構食べれそうだ。これ、帰ったらダイエット必要かもしれないな。それでも、こんなにしあわせな味で太るのならいいと思えた。


「……んぅ……」
「……気持ちいい?」
「ぅん……きもち、いぃ」
「可愛い」

耳元でそんなことを囁かれた後は、耳をパクリと食まれる。立樹の唾液の音が響いて、耳の弱い俺は喘ぐしかなくなる。


「はぁ……んぅ……」

立樹の手は執拗に乳首を攻める。乳首も性感帯の俺はたまらない。快感は高みへとのぼる。


「とろとろの顔してる」
「……おねがい、もう、ちょうだい」

耳と胸を散々攻められて、立樹が欲しいのになかなか入れてくれない。


「そんなに欲しい?」

立樹の問いかけにこくこくと頷く。さっきから弱いところをこれでもかと攻められて欲しくならないわけがない。


「ふっ……ぅん……はぁ」
「じゃああげる」

そういうと立樹は、自身をあてがうとゆっくりと俺の中に入ってくる。ミチミチと広がっていくそこは、苦しいけれど気持ちがいい。


「悠の弱いところはここだよね」

立樹はそう言ってある一点を擦る。そこは前立腺で、俺の弱い上を擦られるともうたまらなくなる。


「あぁ……はぁ……」

前立腺を擦られ、浅いところで腰を振られるとたまらない。もっと欲しい。もっと奥まで欲しいと淫らにも俺も腰を振る。


「腰、揺れてる。可愛い」

そういうと立樹はもっと奥へと入ってくる。もっと……もっと奥まで欲しい。そして最奥を突いて欲しい。


「一番奥まで欲しいんだよね。欲しいって言って」
「んぅ……あぁっ……んぅ、ほしい……たつき、いちばんおくまで……ちょうだい」
「いいよ。よく味わって」

そう言うと立樹は一気に一番奥まで入れてくる。あまりに急に一番奥を突かれて目の奥がチカチカとする。でも、それがたまらなく気持ちいい。


「あぁ……きもち……いぃよぉ」

パンパンと乾いた肌と肌がぶつかる音がして、その音にさえ気持ちよくなってしまう。


「あン……はぁ……イク……イッちゃぅ」
「ん……俺も、気持ちいい。イケるならイッていいよ。奥、突いてあげるから」

そう言うと立樹の腰の動きはもっと早くなり、俺はもっと高みへと上り詰める。俺の腰も揺れていて、もうイキそうになる。


「ほら、悠」

止まらない立樹の腰の動きが気持ちよさを加速させる。


「はぁ……あ……あ……あぁ……イク……イク……あぁぁぁぁ」

一番の高みから一気に落ちる感じ。立樹が最奥 を突いたとき、俺は背を仰け反らせてイった。

イった後の体はすごく敏感で俺がイっても立樹がまだ中にいるから、立樹の形を感じるだけでもイキそうになる。

イクのに前を触らなくても後ろだけでイッてしまう敏感な体だ。立樹の上り詰めるような色気を見ているだけでもイキそうになる。

 
「……気持ち良かった?」

俺はイったばかりで息が乱れているので声を出すのがしんどいので、頷く。


「もう少し待って……俺ももうすぐイキそうだから」

立樹はそう言うと再度腰の動きを早める。眉間に皺が寄っていることから、もうすぐイクんだろうとわかる。でも、俺もイったばかりの敏感な体だから、またイキそうになる。


「あぁ、またイッちゃう」
「イって、悠。一緒にイこう」
「あぁぁぁぁぁぁ」
「クッ……イク!」

最後。俺の中で光がはじけた瞬間、立樹も俺の中で果てた。


「気持ち良かった?」

頭の上から声が降ってくる。

事が済んで、立樹の肩に頭を乗せている状態で訊かれたので上を向いて答える。


「うん。気持ち良かった。立樹は?」
「最高に気持ち良かった」

そう言うと立樹は俺の頭を撫でてくれる。いつも俺に甘い立樹だけど、セックスのあとの立樹の表情は砂糖と蜂蜜を混ぜたような甘い表情で俺を見る。甘さが半端なくてその表情をみると、愛されているんだなと強く感じる。

と、そんな事後の甘い空気を破ったのは俺のお腹の音だった。色気もなにもなく、グーと大きな音を立てて空腹を訴える。


「くくっ。ケーキ、俺の分が残ってるからそれを食べていいよ」
「そんなに笑うなよ。仕方ないだろ。何回もイクのってめちゃ体力使うんだぞ!」
「わかってるよ」

そう言いつつもまだ笑っている立樹に、俺は唇をとがらせて起き上がり残っていたケーキを食べた。ホールケーキのほとんどを俺が食べたことになる。家に帰ったらほんとにダイエットしないとマズイよな。


「足りた?」
「もう少し食べたい気もするけどルームサービス終わってるじゃん」
「朝まで大丈夫?」
「うん。朝食を楽しみにするよ。朝食ってどこで食べるの?」
「今日のラウンジ。だからゆっくり食べられるよ」

クラブラウンジはスイートルーム利用の人だけなのでそんなに混みあうことはなさそうだ。スイートルームなんて高いだけと思っていたけれど、昨日の貸切露天風呂も無料だったし、クラブラウンジを使えるのならそれほど高いとは言えないのかもしれない。せっかくの記念日だからとスイートルームをチョイスした立樹はできる男だ。そんなできる男が、俺のものってすごいことだなと思う。惚れ直すよなぁ。


「ん? どうした? やっぱり足りない?」
「も〜違うよ〜。惚れ直してたの!」
「朝食で?」
「そんなに卑しくないよ!も〜知らない!」

食べ物の話しをしていて、なんで惚れ直すという話しになったのか立樹はわかっていないようだ。いつもなら言ってしまってるかもしれないけど、今は言ってやるもんか!

そう思ってベッドに再び入って立樹に背中を向けて横になる。いや、ベッドはもう一台あるけど、ベッドは大きいので2人で寝ても余裕があるし、いつも立樹と寝ているから癖で同じベッドに入ってしまう。

背中を向けた俺に立樹が謝ってくる。


「悠。茶化したわけじゃないんだよ。ただ、なんで惚れ直されたのかわからなくて」
「わかってる。わかってるけど……」
「ごめんね。だからこっち向いて。可愛い顔見せてよ、悠」

耳元で謝られて、後ろから腰を抱かれたらすぐに許してしまう。チョロいな、俺。

立樹の腕の中でもぞもぞとし、立樹に向き合う。


「スイートルームってただ高いわけじゃないんだなーって思ったの。そして記念日だからっていいチョイスした立樹はいい男だなって思ったの」

俺がそう言うと立樹は破顔した。


「悠が喜んでくれたのなら良かった。でも、ここのスイートはいろんな付加価値を考えたら当然の価格かな。サービスとか考えたら普通の客室の方が高く感じる」
「そうなんだ。そしたら、また来たいって言っても大丈夫?」
「しょっちゅうは無理だけど、ちょっと贅沢したいときにまた来よう」

そう言って俺の髪を梳いてくれて、俺は気持ち良さに目をつむる。言葉が途切れても手はずっと髪を梳いてくれているから眠くなってしまい、俺はそのまま眠りに落ちた。