プロローグ
「あんたのせいよ。あんたのせいであの人は来てくれなくなったのよ」 母は目をつりあげてこちらを睨む。 名門オメガの家系。 父がアルファで商才があり、母は妾でオメガ。そしてオメガを望まれていたのに、生まれた僕はベータで。 それから父は母のところ…
あなたが愛してくれたから
出会い
全ての講義を終えて帰ろうとしたところで声をかけられた。「ねぇ加賀美くん待って」 振り返ると、優し気な爽やかイケメンがにこやかに立っていた。 確か、如月くんとかいったはずだ。如月樹くんだったかな。この講義でよく見かける。 女子にはイケメンで…
あなたが愛してくれたから
オメガになりたい 01
樹くんと付き合うようになってから僕はオメガだったら良かったのに、と思うようになった。 オメガは三ヶ月に一回ヒートがあるから大変だ。番がいれば、番以外を誘惑することはなくなるので襲われたりといった心配はない。それでもヒートはある。 ヒートの…
あなたが愛してくれたから
オメガになりたい 02
樹くんに協力して貰って、後天性オメガになる方法を試して一ヶ月経ってもヒートはこなかった。もっとも、ヒートは三ヶ月に一回だから単にまだ来ないだけかもしれないけれど、やっぱりそんなに簡単にΩになんてなれないのか、と少し落ち込む。 そうやって僕…
あなたが愛してくれたから
オメガとして 01
その日は朝から体が熱かった。風邪でも引いたのかな? だから講義が終わるとどこにも寄らずに帰ってきた。 体の熱さは夕方になってから余計にひどくなったし、そのせいか呼吸も荒い。 でも体温を計っても微熱程度しかない。なんだろう? 明日、病院に行…
あなたが愛してくれたから
オメガとして 02
「出来損ないのベータだったお前にしてはよくやったな」 僕は父に褒められたいからではないし、相手をブランド物として見ていたわけではない。何しろ、僕が樹くんに近寄ったわけじゃない。樹くんが告白してきてくれたからだ。それも僕がベータのときに。まぁ…
あなたが愛してくれたから
束の間の幸せ 01
大学を卒業した僕達は、一緒に暮らし始めた。早めに、と言われていた結婚式は七月の第二週で、あと二日だ。 式は当初大々的に、という話もあったけれど、僕達の意向もあり、それぞれの親族のみという内輪での式となった。 そして、四月からはそれぞれ就職…
あなたが愛してくれたから
束の間の幸せ 02
式場に着き、僕と樹くんは別々の控室に案内された。「じゃあ、後でね」「うん。後で」 控室で準備と言われても、メイクで顔色を整えて、髪をセットして着替えたら終わり。これが女性なら大変なんだろうけれど、男の僕はトータル三十分もあれば準備完了。 …
あなたが愛してくれたから
失踪 01
早いもので樹くんと結婚して三年が経った。相変わらず樹くんは甘くて優しい。幸せな結婚生活、と言えるのだと思う。「ただいま」 時刻は十九時半。樹くんの帰宅にしたら早いだ。 営業から始めた樹くんは、今は係長になり、一日中外に出ることは少なくなっ…
あなたが愛してくれたから
失踪 02
樹くんは僕を探すだろうか。付き合い始めた頃、樹くんは言っていた。いなくなったら僕を探す、と。でも、今はどうだろう。結婚して三年経っても妊娠もしない妻。もう用はない、と探しもしないだろうか。如月に自分の居場所はないと思い家を出てきたのに、探…
あなたが愛してくれたから
帰宅
翌日、僕はホテルから会社に出勤した。「体調悪かったみたいだけど、大丈夫?」 会社の自分の席に着くと、同じ部の友坂さんに声を掛けられた。友坂さんは僕より四年先輩のオメガで、普段は一緒にお昼を食べたりと仲良くして貰っている。オメガ枠の採用があ…
あなたが愛してくれたから
神様からのプレゼント
どうも最近、体調が悪い。微熱っぽかったり、お腹が痛かったり、後はどこででもすぐに寝ちゃったり。仕事は忙しくないから疲れているわけでもないのに。 そんな僕の様子を見ていた友坂さんが一言、ぽつりと言った。「もしかして妊娠してるんじゃない?」 …
あなたが愛してくれたから