EHEU ANELA

愛のない婚約者は愛のある番になれますか?

番の約束 02

「ん……んっ」

唇を食べられるんじゃないかと思うくらい激しく吸われ、閉ざしている唇をノックされる。それにおずおずと応えると陸さんの舌が僕の口内を縦横無尽に動き回る。そして僕の舌に絡みついてきて唾液を飲まれる。もう、頭がおかしくなりそうだ。それでも絡まってくる陸さんの舌に、僕も負けずに絡み返していく。

 
「んん……んう」

呼吸が苦しくなったところで陸さんの唇が離れる。そして僕はやっと呼吸ができるとばかりに大きく呼吸をする。するとそれを見た陸さんが小さく笑う。


「鼻で呼吸しろ」

わかってる。鼻で呼吸しなきゃいけないことくらい。でも、キスしちゃうと訳がわからなくなってそれどころじゃないんだ。呼吸のことなんて頭から飛んでしまう。

大きく息を吸って、吐いてを繰り返しているとまたキスされる。今度はしょっぱなから口内を縦横無尽に動き回る陸さんの舌。僕の歯列をなぞる陸さんの舌に、ぞくりとする。

鼻で呼吸しようにもそんなことをされたら呼吸どころじゃない。なんとか頑張って息をしていると陸さんの唇が離れる。呼吸がうまくできないから助かった。でも、離れてしまったことが寂しくも感じるのだ。

肩で大きく息をしていると、ソファに押し倒される。そして軽くキスをされ唇が耳へと行き、今度は耳を丸ごとパクリと食べられる。ほんとに食べられたという表現がぴったりで僕はびくりとする。そして、陸さんが食むとぴちゃぴちゃと水音が耳元で聞こえて背筋に何かが走り、口からは自分のものとは思えない甘い吐息が漏れる。


「あん……」

耳を丸ごと食べられていたのが出され、ホッとしたのも束の間。陸さんの舌が僕の耳の穴にまで入ってくる。そんなの汚い。


「んっ……汚いから、やめて」
「汚くなんてない。いいから感じてろ」

そんな……。汚いんじゃないかって気になるけれど、感じるのは止められない。そんなところまで感じるだなんて思いもしなかった。


「っん……ん」

耳への愛撫は執拗でなかなか終わらない。そして僕の口からは甘い吐息。背筋はゾクゾクとする。そんな風だから神経は耳に集中していると、陸さんの手が甚平の中に入り乳首をかりっとひっかくので背筋が反ってしまい、口からは余計に甘い声が出る。


「はっん……もう、ダメ」
「なにがダメなんだ? 気持ちいいだろう」

そうか、これが気持ちいいっていうことなのか。

陸さんは僕の甚平の上を無造作に脱がせると、唇は耳からゆっくりと下がっていき乳首へと到達する。口で乳首を吸われると背筋はまた大きく反ってしまう。


「やんっ」

口からは甘く媚びたような声が聞こえてくる。もはや自分の声をは思えない。

右の胸は吸われ、左胸は軽く捏ねられ、甘く漏れる声はやむことがない。男なのに乳首が感じるのなんておかしいんじゃないかと思うけれど、感じてしまうのは止まらない。

やだ。もう、どうにかなってしまいそうで思わずモジモジしてしまう。僕のボクがさっきから反応してしまっていて、陸さんには気づかれたくないんだ。

けれどそんなことは陸さんにはお見通しだったみたいで、乳首をいじっていた手は僕自身に触れる。


「やぁぁ」
「いやか? 気持ち良くないか?」

自身に触れられて気持ち良くないはずがない。でも、甚平のズボンの上から触られて僕のものは限界に近づく。


「ダメ。ダメ。お願い、離して。出ちゃう」
「イけるなら1度イっておけ」

そう言って陸さんが優しく僕の自身をこするから、僕は思わずイってしまった。

イってしまった僕は陸さんを見ると目に欲が見て取れた。あぁ、食べられる。でも陸さんに食べられるのなら本望だ。ただ、初めてだから少し怖い。


「ベッドへ行こう」

そう言うと陸さんは僕を横抱きにする。え? ちょっと待って。僕、大した筋肉はないし、細身だけど男だから重い。


「陸さん、下ろして下さい。僕、重いから」
「重くはないよ。逆にもう少し食べろ。とにかく暴れるな。落とす」

重くないはずなんかないのに。でも、落とされるのも怖いので陸さんの首に手をやる。すると陸さんは嬉しそうに笑った。なんで?

なんでそんな顔をするの? 怖いから首に手をやっただけなのに。

ソファからベッドまではそれほど距離はなく、すぐにベッドの上に静かに寝かせられる。

すると唇は先ほどのように僕の乳首を吸い、空いている片方の乳首は手で捏ねられたかと思うと優しくつねられる。その刺激に僕の背は大きく反る。痛いはずなのに気持ちいい……。

そして乳首をいじっていた手はするすると下がり、僕の後ろの蕾みへと降りていく。なにをされるのかわかり、思わず身が固くなる。

陸さんに初めてをあげるのは構わない。でも、怖いんだ。痛いんじゃないかって。


「緊張するな。力を抜け。痛いことはしないから」

嘘だ。指があんなところに入って痛くないはずがない。そう思っていると、また僕の唇にキスを落とし、ちゅっちゅとリップ音を鳴らす。そしてまた陸さんの舌が口に入ってきて、縦横無尽に動き回る。陸さんのくれるキスは気持ち良くて、僕の神経は途端にキスに移る。

そしてキスをしているうちに、陸さんの指は僕の蕾みに一本入っていた。でも、それに気がついたのは指が僕の中をくるりと周り、なにかを探しているときだった。

指一本ですら痛いんじゃないかと思っていたけれど、痛みはなかった。それよりなにを探しているんだろう。そう思ったとき体に電流が走ったようになった。


「ダメ!陸さん、そこはダメ!」
「ここか。ここは千景のいいところだよ」

僕のいいところ? 訳がわからず考えてしまう。


「前立腺。聞いたことはあるだろ。ここを刺激すると気持ち良くなるんだ」

前立腺。それは聞いたことはある。すごい刺激で気持ち良くなるって。さっき触れられたときは体に電流が走った。それが気持ちいいということなにだろうか。でも、刺激が強過ぎる。

そんなことを考えていると陸さんの指が二本に増える。そして先ほどの点を刺激され、穴を開くように動かれる。前立腺を刺激されながら、陸さんの指は二本から三本へと増えていき、中でバラバラと動く。それが僕の中を慣らしているのだと気づく。


「ん……陸さん、そこばかり刺激されると変になっちゃいます」

陸さんは僕の目を見て小さく微笑むと、大丈夫だと言う。大丈夫なんかじゃない気がするけど、大丈夫なんだろうか?


「そろそろ大丈夫かな」

そう言うと陸さんは自身を僕の蕾みに当てた。来る! そう思うとまた体が緊張して硬くなる。


「大丈夫だから。痛くしないから。前立腺は痛くないだろ?」

痛くはない。ただ、電流が走ったようになるだけで。それでも力を上手く抜けないでいると、陸さんは僕の耳を再びぱくりと食んだ。そうされて背筋が反る。その隙に陸さんのものが僕の中に入ったのがわかった。

痛くはないけれど、すごい圧迫感だ。それでも陸さんは奥へと少しずつ入ってくる。


「大丈夫か? 痛くはないか?」

痛くないって陸さんが言ったのに、それでも気にかけてくれることに僕は嬉しくなる。


「んっ……。痛くは、ないです。でも、圧迫感が」
「それは少しずつ良くなるはずだ」

そう言いながらもゆっくりと中へと進んでいたとき、先ほどの前立腺がこすられた。


「あぁっ。やぁん」

それでも陸さんは僕の声など聞こえないかのように、奥へ奥へと進めていく。そしてどれくらいたったのだろう。陸さんの動きが止まった。


「全部入ったぞ」

え? 陸さんのモノ全てが入ったの? 圧迫感はすごかったけど、陸さんの言う通り痛くはなかった。これで僕と陸さんは結ばれたんだ。そう思うと目が潤んだ。


「なんで泣く? やっぱり痛かったか?」
「いいえ。痛みは大丈夫です。ただ、嬉しくて」
「嬉しい?」
「はい。好きな陸さんと1つになれたから」
「!」

僕の答えに陸さんは言葉を詰まらせた。なんで?


「そういうことを言うな」

と怒られてしまった。なにも悪いことは言ってないと思うけど。


「動くぞ」

そう言って陸さんは律動をはじめる。そして、それによって例のところを擦られることで僕の背筋は反る。それくらい刺激が強い。

 
「んっ。はぁ」

陸さんも呼吸が荒いけど、僕も呼吸は荒い。そして甘い声はとめどなく出てくる。声を止めることはできない。そうして僕が甘い声をあげていると陸さんはまた僕の唇にキスをしてきた。

この状態でキスされたら呼吸出来なくなっちゃう。それでもキスされたことで余計に気持ち良くなってしまい、余計に声があがってしまう。


「あっ!……ダメ。キスしながらは、ダメ」
「なんで?」
「だって……気持ち良すぎる」

僕がそう答えると陸さんは笑う。なんで笑うの? なにもおかしなことは言ってないと思うけど。


「気持ちいいなら、そのまま感じとけ」

陸さんのモノが僕のいいところを擦ることと、口の中を縦横無尽に動き回る舌とで頭の中は白くなってなにも考えられなくなる。


「んっ……あぁ。ダメ、ダメ。イキそう。」
「イけ」

陸さんに短くそう言われ、僕は自分の腹に白を吐きだした。そのとき一瞬、陸さんの動きが止まったけれどすぐに動き出した。僕は呼吸が苦しいけど、陸さんはお構いなしに腰を動かしている。それに体を揺らされながら、僕はまた快感を拾う。今イったばかりなのに。


「あっ……はぁ。んん」
「千景の中気持ちいいな。中がうねって俺のに絡みつく」

僕の体は陸さんを気持ち良くさせてあげれてるんだ。そう思うと嬉しくなる。僕ばかり気持ちいいのかと思っていた。でも違った。陸さんも気持ちいいんだ。


「はぁ。んぅ。あん」

喘ぎ声が恥ずかしくて唇を噛む。散々声をあげているけれど、初めてなのに感じてしまって喘ぐとか恥ずかしいにもほどがある。


「唇を噛むな」
「だ、って……ん。はずかし」
「恥ずかしくなんてない。綺麗だ」

綺麗? はしたなくも声をあげている僕が? そんなはずないのに。


「あぁ。あっ。やぁ。またイっちゃうぅ」
「クッ。俺もそろそろイキそうだ」
「いっしょに……いっしょにイキたい」

僕がそういうと陸さんはラストスパートと言わんばかりに律動を早める。僕はただそれに揺すぶられるばかりだ。


「んっ……はぁ。イキそう。イっちゃう」
「あぁ、イけ。俺もイク。っク」
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ」

そうして僕はまた自分の腹を汚し、陸さんが僕の中でイった。そして、陸さんは僕の中に精を出し切ると僕の隣に横になり、僕を抱きしめる。


「気持ち良かったか?」

陸さんの問いに僕は恥ずかしくて、陸さんの胸に顔を埋めながらこくりと頷いた。もっと痛いと思っていたけど、圧迫感がすごいだけで、それも次第に感じなくなっていって残ったのは気持ち良さだけだった。でも、そんなことは恥ずかしくて言えない。


「それなら良かった。痛い思いしかしなかったら可哀想だしな」

陸さんの声が優しくて、やっぱり陸さんは優しいと再実感しながら陸さんにすがりついた。


「悪いな。疲れただろう?」
「大丈夫、です」

そうは返事するけれど、ほんとは疲れて動きたくないし動けない。

 
「俺は1回だけど、お前は何回かイってるんだから寝とけ」

でも、体、汚れてる。お風呂は無理でもお腹は拭きたい。そう思っていると陸さんは僕を腕の中から出すと起き上がった。どうしたんだろう。陸さんは寝ないんだろうか。

そんなことを考えながらも僕の意識は遠ざかっていった。



翌日の朝食も素晴らしかった。朝は作るのが面倒くさいのでパンにしている身としては和食というのが嬉しい。ほんとは作らないといけないんだけど。だけど昨夜の夕食といい、ここは料理が美味しいなと思う。


「朝食も美味しいですね」
「美味いだろう? この食事であの部屋なら多少高くてもここに泊まりたいと思うんだよ」

確かに、あれだけの広い部屋に温泉、そして美味しい食事。一泊いくらか怖くて聞いてないけど、多少値が張るのは当然だと思う。


「よし、そろそろ行くか」
「はい」

旅館を出て車でガラスの森美術館へと行く。仙石原の方へと車は進み、しばらく行くとガラスの森美術館に着いた。建物の外観は西洋のお伽話に出てきそうな可愛い建物だった。

案内図を見るととても広くてびっくりした。ここ、全部見るには何時間かかるんだろう。まずは受付棟を抜け、光の回廊を通ってメイン施設であるベネチアングラス美術館へと行く。

部屋に入って真っ先に目についたのは色ガラスのシャンデリア。こんなところにまでガラスを使っているのがすごい。そして展示されているのはガラスだけかと思いきや中世イタリアの家具・調度品も展示されていて見応えがある。

建物はこのベネチアングラスだけでなく、他にも現代ガラスの美術館もある。でも今日は誓いの鐘がお目当てだから展示物はサラッと回るに留めて、広い庭に出ることにした。

そして驚いたのが、庭にもガラスで作られたものがあるということ。花の中にガラスで作られた花まであって立派だとしか言いようがない。


「すごいですね、ここ」
「すごいだろう。敷地内の至るところにガラスが飾られているんだ」
「ここ、全部回るのって大変そう」
「そうだな。かなり時間がかかるな。気に入ったのならまたくればいい。箱根まではそんなに時間かからないから」
「来たいです!」
「紫陽花の季節も見物だぞ」
「わ〜見たいな。薔薇の季節も綺麗そうだし」
「じゃあまた来よう」
「はい!」

そんな話しをしながら僕たちは誓いの鐘に続く小径を歩いていた。木々に囲まれたその小径は狭くて、ほんとにこの先にあるのか不安になってしまう。でも、所々に看板が出ているのだから間違いはないのだろう。

途中にはガラスの東屋があって、ここがガラスの森美術館だということを思い出す。東屋を後にまだまだ下っていくと、四隅に円柱を持つ泉があり、飾られているのはダイアナだった。

そして女神像の前に経つのが今日の目当ての誓いの鐘だった。そこはもっと広いのかと思ったら意外とこじんまりとしているところだった。もちろん鐘の周りにもガラスが飾られているし、周りの草木の間にも面白い形をしたガラスのモニュメントがある。


「これから先、なにがあっても千景を守ると誓うよ」

陸さんが鐘を鳴らしてそう誓ってくれる。だから僕も誓うんだ。


「これから先、ずっと陸さんの隣にいます」

結婚式のとき僕は心から誓ったけれど、今日、再度誓う。この先なにがあっても陸さんの隣にいようと。


「ありがとう。千景」
「いいえ。僕こそ、ありがとうございます」

そして2人だけで誓いあい、戻ろうとしたところで藤棚があった。もちろん今は時期じゃないから藤は咲いていないんだけど、そこにはガラスでできた藤が咲いていた。


「すごい!綺麗!」
「強羅公園もそうだが、今度は紫陽花の季節に来るか」
「来たいです!」
「じゃあ来年にでも来よう」
「はい!」

そんな風に何気なく未来のことを約束できることがとても嬉しかった。